国内唯一の工具ミュージアム「KTCものづくり技術館」訪問レポート
Ktcネプロス
バナー

京都府久世郡久御山町の「KTC(京都機械工具)ものづくり技術館」、そして併設されている「ネプロスミュージアム 360°(サンロクマル)」を訪問しました。汎用ツールと専用ツール3,000点以上が飾られている圧巻の光景。そして、工具が並べられているだけではなく、鋳造から表面処理に至るまで金属加工のすべての工程が見学可能な、エンターテインメント施設さながらでした。

今は外出自粛が続いているため、見学会の受け入れが中止されていますが、その状況を補えるよう現地の雰囲気が伝わる様なレポートをしていきます。

日本国内唯一の工具ミュージアム

KTC設立50周年記念事業の一環として2003年に建設された「KTCものづくり技術館」。ミュージアム&セミナー会場&工場見学ツアーの拠点として、ものづくりの一体型体験会や研修が開催されています。聞くところによると、小学生から大学生・親子・企業・プロの技術者まで、年代・職業・見学テーマに応じた様々なプログラムが用意されています。材料切断・鍛造から表面処理まで、金属加工のほぼ全ての工程を知ることができる工場見学はもちろん、KTCの様々な製品を見て・触れることもできます。

同社設立50周年記念事業の一環として設立されたKTCものづくり技術館。ネプロスミュージアム 360°も館内に併設されている(ネプロスミュージアム 360°のみ有料)

ものづくり技術館:ものづくりの楽しさを肌身で感じられる体験型施設

3,000点以上のKTC製品と1,000t級鍛造プレス機やクルマの整備が体感できるピットの他、SNS時代には欠かせない動画配信用・撮影スタジオも完備

ミュージアムに入ると、さっそく出迎えてくれるのは1,000t級の大型熱間鍛造機械の実物。吹き抜けの展示スペース中央に設置されていて、圧倒的な存在感を放っていました。また、周囲をぐるりと覆う壁面には同社自慢の機械工具が種別ごとに見やすくパネル展示されていて、普段はあまり気に留めることもないレンチやソケットの加工部分、細部まで洗練されたデザインなどなど、じっくりと眺めることができました。

入り口のモニターには来館者名を、また内外から訪問された方々が住まう地域の国旗を揚げるなど、随所におもてなし精神がみてとれるようです

一人の工具愛好家としてもたまらなく幸福なひとときでした。ハンドツールの展示数としては国内最大規模を誇る同技術館は、2003年4月の一般公開以来、来館者数は年間平均約6000人近く、世界76カ国以上から数千人以上の海外技術者研修を受け入れているというから驚きますね。コロナ渦によって自粛期間も続いた様ですが、1日でも早く多くの人に訪れていただきたい場所です。

KTCドライバーは赤色のグリップがプラス、緑色のグリップがマイナスに統一されているとは知りませんでした!

中央スペースには工具箱のいろいろな種類が並べられ、ピットを臨むコーナーには「デジラチェ」をはじめとするトルク管理系ツールがずらり

ハイエンドブランドのネプロス製品も展示されていて、KTCの魅力を余すことなく発信中!!

設立以来の歴史を紐解く貴重な資料やツール・書簡なども展示されていて、2Fには年季の入った工具箱や記念モデルなどもディスプレイされています

屋上ガーデンでは社員有志がお手入れをしている100種2,000株の草花を楽しむことができます。天気がいい日の休憩時間をここで過ごせば身も心も癒されそうです。ハート型の敷石が3つあるのでぜひ探してみてください!

工具箱のデザインがそのまま再現されたサービス部門の建物。なかでは各種ツールの整備や修理、公正などが熟練スタッフの手で行われています

ネプロスミュージアム 360°:6つのゾーンであなたを虜に

2018年、KTCものづくり技術館内に新しく設置されたのが「ネプロスミュージアム 360°(サンロクマル)」です。専任のツアーコンダクターが順次コーナーを案内してくれる充実の内容に、思わず圧倒されてしまいました。コンセプトは、「ネプロスを全身で感じる(感性)ライブ空間」。6つのゾーンを通過するごとに気分を高めながら、ネプロスのすべてを堪能できるのが最大の特徴。

入場時には、専用のラチェットハンドルでドアノブをひねります

ラチェットハンドルが用いられた入り口のノブを捻ると現れるのは、360°に広がる不思議な空間。ゾーンはテーマごとに「1.こんなところにネプロス」「2.ネプロス解体新書」「3.ネプロスシアター」「4.ネプロスに触れる」「5.ネプロスに包まれて」「6.ネプロスライフ」と分けられていました。

まずはトヨタやカワサキのレーシングチームにも採用されるKTC製品の展示やビデオで始まり、次いでネプロスの設計思想にふれることができる歴史を紐解き、そしてみて知って眺めてふれて、最後は工具あるライフスタイルを紹介するコーナーへ。トリックアートを用いた展示物に溶け込んで記念撮影ができる撮影スポットも用意されているあたりは、おもてなし精神を感じずにはいられませんでした。

コンマ秒をしのぎ合う過酷なレースシーンで機能し続けるネプロスの凄みが伝わるビデオや実際に使用された工具を展示。

「究極の工具」のが具現化されたネプロス独自の設計思想。そして、厳格なJIS規格をはるかに超える製品クオリティ、機能性が伴った美しい装飾処理。日本が誇る高品質工具を堪能することができました。昨今ではハンドツールだけでなく、モビリティ社会の進化に応じたメンテナンス作業支援システムの提案、工具や測定具にセンシング技術を取り込んだTRASAS(トレサス)の開発など、誰もが安心して暮らすための技術も研究されています。

導入経路を彩る四季折々の風物詩が不可思議な空間の演出に一役買う

並べると金閣寺が描かれたネプロス漆ドライバー。

フレームと引き出しを自由に組み合わせ出来る提案収納「neXT」や、工具とライフスタイルを融合した魅力ある提案型展示も

同一軸がもたらすスムーズな回転運動が心地良いT字型レンチの実際が味わえる体験コーナー

ネプロス製品が壁一面にレイアウトされた360°ぐるりと見渡せる空間演出がスゴイ。不思議な高揚感が味わえ、この気持ち味わいたさに何度もリピートする工具好きも居るとか

工場見学では、材料を熱して成形する「熱間鍛造」の様子や、常温で行われる「冷間鍛造」の違いを丁寧に教えてもらいつつ、約2,000トンの加圧力を持つハンマーが金型に乗せた素材に打ち下ろす瞬間が目撃できました。他にも、硬度を高めるために加熱後に急冷却する「焼き入れ」、その後でさらに加熱する「焼き戻し」により、しなり効果を生み出し粘りを出す「熱処理」工程も覗けました。とりわけ、研磨用の石と研磨材を用いた「バレル研磨」後に行われる「メッキ」工程で美しく仕上げられていく様子は、いつまでも見飽きることがありませんでした。

「おもてなし、こだわり、挑戦、共感」をキーワードに据えたハード・ソフト両面からものづくりの魅力を全体感できる「KTCものづくり技術館」と「ネプロスミュージアム 360°(サンロクマル)」。

今回の記事では工場内を詳しくご紹介できませんでしたが、コロナ渦の自粛が明けた際には、ご自身の目で、手で、この感動を味わってみてみてください。

KTCものづくり技術館
ネプロスミュージアム 360°(サンロクマル)

〒613-0034
京都府久世郡久御山町佐山新開地128番地(本社敷地内)

▼KTCものづくり技術館見学窓口
TEL:0774-46-3959
受付時間:平日9:00~17:00(会社休日除く)

詳細ページ:https://ktc.jp/brand/museum-west

東日本KTCものづくり技術館

〒338-0826
埼玉県さいたま市桜区大久保領家片町111番地1東日本KTCものづくり技術館見学窓口

TEL: 0774-46-3959
受付時間:平日9:00~17:00(会社休日除く)

詳細ページ:https://ktc.jp/brand/museum-east/

東日本KTCものづくり技術館は主要製品の展示と、これを利用したソリューションや活用方法などをセミナー形式で紹介するプレゼンテーションルームです。首都圏の来訪者にも“京都”を感じることができる坪庭が設けられていて、ツールの進化を五感で感じられる空間演出が特徴です。

※ただいま、2拠点とも新型コロナウイルスの国内感染の拡大を受けて見学の実施を見合わせ中。再開については、決定次第ホームページにて随時案内